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構造解析分野 2003年08月24日更新

ここでは,構造解析に関する教科書を紹介します。

「弾性力学の基礎」

井上達雄:
日刊工業新聞社
昭和54年3月初版
2500円(当時)
[ 1]

本書は「塑性力学の基礎」の姉妹版です。
材料力学ではなく,弾性力学という視点で基礎的なことがわかりやすくまとめられています。

本書も他書と同様にやや式が多く,言葉による解説が少なめですが,この時代の教科書の雰囲気を表しています。
内容は硬派で「塑性力学の基礎」と雰囲気はほとんど同じです。
現在,学校教育が衰退し,弾性力学はおろか材料力学さえも形骸化しています。

しかしながら,線形解析を中心とした有限要素法の普及に伴い,全く勉強してこなかった人達が,弾性力学の基礎について書かれた参考書を必要としています。店頭では,ほとんどお目にかかれませんが,弾性解析をきっかけに勉強をしたい人達の増加によってこのジャンルの書が再び必要とされるときが来ていると思います。 「有限要素法入門改訂版」か「Exceによる有限要素法入門」を読んですこしなれた段階で読むとよいと思います。

「塑性力学の基礎」

北川浩:
日刊工業新聞社
昭和54年初版
2500円
[ 2]

塑性力学について非常に詳しくまとめられた良書です。
弾塑性解析を勉強されていて弾塑性の材料モデルのことがよくわからないという方は,ぜひ一読されることをお勧めいたします。
非線形構造解析ソフトウェアなどでは,ヤング率とポアソン比以外の応力とひずみの関係を定義するパラメータを設定する必要があると思いますが,
そういうものが何かわからないという人は一度は弾塑性モデルの勉強をしておくほうが良いでしょう。
数式が必然的に多くなりますが,有限要素法による弾塑性解析を理解したい人ならばさほど問題は無いと思います。
ただし,本書は古いので店頭で入手することは困難で,大学の図書館か古本屋をあたる必要があると思います。

「有限要素法入門改訂版」

三好俊郎:
培風館
1994
[ 3]

この本は有限要素法の弾性問題について扱っています。
前半は有限要素法の概要と計算に必要な行列演算について大変丁寧に説明されていて初学者は必見です。
中盤は,有限要素式の導出がわかりやすく説明されており,初学者でも頑張れば自力で弾性解析の定式化を行うことができる内容です。
後半は,FORTRANによる弾性解析コードが掲載されており,この分野でプログラムを組む初心者の人の助けになっています。

ただし,本書のプログラムは,サブルーチンLOAD(pp.206)で未定義変数GZが宣言されているため,
この部分を修正しないと動作しない可能性があります。

本書の前半にある行列演算に関する説明は,有限要素法の定式化について学ぶ人にとって価値が高いと思います。
線形代数の教科書などは,特に有限要素法を前提として書かれていないのは当たり前として,数学分野の本という位置づけのため,説明に難解な数学用語が登場するなど工学を志向している人にとっては,理解が難しいという側面があります。
その点、本書の説明は有限要素法をこれから学ぶ人にとって必要な行列演算について記述されているので勉強しやすいと思います。
また仮想仕事の原理に関する説明もわかりやすい式の展開を行っていると思います。
これから勉強したいけど,どの本を読めばよいかわからない人はまず本書を読むことをお勧めいたします。

「演習有限要素法」

三好俊郎,白鳥正樹:
サイエンス社
1996初版第8刷
1900円
[ 4]

主に構造解析についてプログラムのコードも随所に取り入れて詳しく説明されています.
初版は1981年なので内容は基礎的な事項が中心です.
しかしながら初学者にとっては人に聞けない数学的な事項も説明されていて勉強するにはもってこいの本だと思います.
上記の「有限要素法入門改訂版」と合わせて,使用するとよいと思います。

「Exceによる有限要素法入門」

吉野雅彦:
朝倉出版
2002年4月20日初版
3800円
[ 5]

有限要素法による構造解析をExcelを利用して学ぶことを意図した書。
2次元弾性問題から弾塑性問題まで説明されており,構造解析の有限要素法の中身を知りたいという人や,復習をしてみたいという人で難しい本は苦手という人に向いていると思います。

この本が他書と異なる点は、p.20の2.2.1の応力の定義について,「応力は物体表面にある働く応力と物体内部に働く応力では定義が異なる。」と陽に言及している点だと思います。この指摘がピンと来るか来ないかは人によると思いますが,この一文があることで本書の価値が高いと思っています。
応力は「ベクトル」であると言っておいて,ほとんど何も言わずに次の章では「テンソル」ですという本がほとんどだからです。

また塑性に関する部分の定式化に関しても丁寧に記されており,弾塑性問題のプログラムにチャレンジする際に参考になると思われます。
塑性分野まで丁寧な式の説明がありこの点で他書をリードしています。
惜しい点は,仮想仕事の原理から,三角形要素を使用した離散化式の導入について初心者にはつながりが少々わかりにくいということです。(そのような声を複数の人から聞いています。) ただし,それ以外は全般的に非常にわかりやすく書かれていますので,万人向けの良書になると思います。

岩波講座「現代工学の基礎 計算固体力学<空間系U>」

矢川元基,吉村忍:
岩波書店
2001年1月30日
7200円
[ 6]

構造解析について,有限要素法のような構造物を連続体としてマクロに扱うアプローチと,構造物を分子としてミクロに扱う分子動力学法によるアプローチについてダイジェスト的にまとめられています。またタッチが理論を詳述するよりもさらっと概要がつかめるように記述されています。大規模計算やメッシュ生成などのトピックスにも触れられており,これから構造解析を勉強してみたいという学生やエンジニアの人向けでしょうか。

「計算力学とCAEシリーズ2 境界要素法」

松本敏郎,中村正行:
培風館
1991年7月10日初版
4800円
[ 7]

境界要素法の教科書です。弾性力学問題から熱,振動,線形座屈,音響などの波動問題,逆問題までと非常に広範にわたって説明されているしっかりした本です。 基本プログラムコードも掲載されており,境界要素法を主に勉強されたいという方にとって最適な本です。
本書は,非常に骨太に書かれていますが,文章構成,図や表の使い方などに洗練されたうまさを感じさせます。文章の書き方などで参考になる本を探している人には,ぜひ本書を推薦します。全体的に学生,研究者向けでしょうか。

「非線形有限要素法の基礎と応用」

久田俊明,野口裕久:
丸善株式会社
平成7年12月25日初版
9900円
[ 8]

本書は,非線形構造解析について正面から説明しており,内容は非常に高度です。タフな数式がボリューム多く載っています。
非線形分野の構造解析の難しさについていろいろ学べると思います。
非線形構造解析のがっちりとしたプログラムを作成しようという、志しの非常に高い人は本書を読んでみてはいかがでしょうか。
また,非線形構造解析を主業務にしておられる方も,是非本書を一読されることをお勧めいたします。

「有限要素法の基礎と応用シリーズ2 マトリックス法材料力学」

山田嘉昭:
培風館
1980年初版
4100円
[ 9]

構造解析をこれから学ぶという方にお勧めの本です。
有限要素法の基盤となったマトリックス法や材料非線形などわりと幅広く平易にまとめられています。
アプローチとしては,一次元の梁の話から進ので,機械,土木系の学生にぴったりだと思います。
なかなか書店の店頭にはお目にかかれませんが,絶版ではありませんので手に入れることは可能です。

「実践 有限要素法−大変形弾塑性解析−」

後藤学:
コロナ社
1995
2200円
[10]

構造解析の非線形分野の入門書です。
弾性解析と弾塑性解析の違いについて簡潔に書かれています。
本書は弾性解析について書かれた本を読んだ後に読むと理解しやすいでしょう。
なお,本書には2次元問題の大変形有限要素法プログラムが掲載されています。
大変形問題の解析プログラムを作成する方は,このプログラムをベースに自分に必要なプログラムに改良するのも良いでしょう。

「構造系の座屈と分岐」

池田清宏,室田一雄:
コロナ社
2001
2700円
[ ]

座屈現象について,有限要素法によるアプローチを前提にまとめられた書。
座屈をテーマとしている人で,座屈をよくわかっていないで解析している人は読んでみては如何でしょうか?
学生ないし研究者向け。

「有限要素法の基礎と応用シリーズ9 有限要素法による振動・音響工学/基礎と応用」

加川幸雄:
培風館
1981
4800円
[音2]

この本は振動や音響問題について詳しく丁寧に解説されています。
有限要素法の基礎から応用まで大変丁寧に説明されていて振動や音響問題を扱う方には必須の書です。
巻末にはFORTRANソースコードも掲載されています。
残念ながら,本書の新品を店頭で入手することはできないでしょう。古本屋をあたってみてください。
また大学の図書館などに行けばあると思います。

「動設計のためのモデリング」

日本機械学会編:
オーム社
1995年6月25日初版
5500円
[音3]

本書は,振動分野を中心とした動的現象の設計について,いかにモデリングを行うかについてまとめた書です。
振動分野などの設計や解析を行っておられる方で,よく全体像が把握できないという方に向いていると思います。

この本を読んで,なんとなく振動解析というものの流れがわかったら,振動工学の本で振動現象に関する基本を勉強するとともに,解析ソフトを使える人は基本的な問題を作って確認するとよいのではないでしょうか。
今では大きな書店でも店頭では手に入りにくいかも知れません。

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