磁場・磁界解析の参考図書
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磁場解析分野 2004年02月11日更新

「電気工学の有限要素法」

中田高義,高橋則雄:
森北出版
1986
4800円
[ 1]

本書は,有限要素法による電界・磁界解析に関するバイブルです。

これから解析プログラムを作ろうと考えている人,または市販ソフトを使用しているがブラックボックスの中身を知りたい人にとっても,最良の書といえます。
本書は2次元及び軸対称場の定式化に関して,非常に詳細に記述されています。また演習問題などが非常にツボを押さえた問題が選ばれており,勉強になります。非線形解法や永久磁石の取り扱い,境界条件,磁束とベクトルポテンシャルの関係,要素,連立一次方程式など,有限要素法電場および磁場解析に関して,基礎的なことが詳細に説明されています。
また最後に線形解析のFortranソースコードも掲載されており,自習を助けています。
学会や論文などでも引用されることが多いことがこの本のすばらしさを証明していると思います。
蛇足ですが,現在入手できる版は第2版2002年1月6刷発行で表紙はハードではなくソフトになっています。
持っていない人は,すぐに入手しましょう。

本書では,電気工学の分野から有限要素法を利用しているため,

B = μ0H + M

という扱いをしています。ここで

B [Wb/m2] = [T] (磁束密度)
H [A/m] (磁場)
μ0 [H/m] (真空中の磁気透磁率)
M [Wb/m2] = [T] (磁化)

です。電磁気学や材料物性分野の書では,

B = μ0( H + M )

と表現する書が多いようです。
このような記述の場合, 磁化Mの単位は [A/m]となり磁場Hと等価となります。

どちらの表現もMを磁化と呼んでいるので注意が必要です。
有限要素法を利用する工学の立場からすると,B = μ0H + M の表現のほうが使いやすいと思います。
Mを必要とするのは,永久磁石を取り扱う場合でありその際,永久磁石特性として磁化M [T]が明記されているからです。
永久磁石は B-H 特性のほかに,M-H特性が重要だからです。
ただし,永久磁石メーカーなどは磁石を材料の観点から捉える傾向にあり,磁化は M[T] ではなく
J [T]([kG])や I [T](kG) と記載されているのが普通です。
材料的な観点は物理学と近くなるので,Mは単位体積あたりの磁気モーメント [A/m]として使用される傾向があるからです。
つまり B = μ0( H + M )の立場です。
したがって,磁石のカタログなどにある磁化 J や I は,
J = μ0M [T] または I = μ0M [T] となります。
このように電磁気学や材料学では,J [T]とかI [T] とかで磁化[T]を表現します。

しかし,電気工学的な立場では, Jは電流密度[A/m2]に,I [A]は電流値を表すため,これで磁化を表すことは避けたのだと思います。
そして磁化は M [T] として表現されることになったのではないでしょうか。
学習する際には,ここらへんのことを注意しながら理解する要があります。

「有限要素法による交直電磁石の設計と応用」

中田高義,河瀬順洋,伊藤昭吉:
森北出版
1991
[ 2]

上の「電気工学の有限要素法」とならんで,バイブル的な本。
二次元有限要素法による磁界解析の応用の具体例が豊富に解説されています。
前半は電気工学の有限要素法のダイジェスト的な感じですが,電磁力やトルク計算法などが新たに説明されています。
本書の最大の特徴は,有限要素法磁場解析を,機器の設計にどのように適用していくかについて書かれていることです。
豊富な例を挙げて,詳細かつ実戦的に説明されています。
このようなノウハウについて書かれた文献は意外に少なくこの書の価値はとても高いと思います。
本書も発行されてすでに10年以上を経て,近年の計算機環境の向上でかなり容易に3次元解析ができるようになりました。
そのため,ソフトウェアを導入されるといきなり3次元解析や数万要素の計算を行うようなケースも増えているかと思います。
しかしながら,有限要素法はあくまで実験を補足する計算機ですので,使い方を学ぶためにはトレーニングをする必要があります。
トレーニングにおいては,要素数が1000以内の小規模なモデルで行うことが大事です。
これならモデル作成にもそれほど労力をかけなくて済みますし,本質を捉えやすいと思います。
その際,本書は2次元問題や軸対称問題が豊富に取り上げられているので,大変重宝すると思います。
現在店頭では,あまりお目にかかれませんが是非手元に置いておきたい本です。

「電気電子のための有限要素法の実際」

加川幸雄:
オーム社
1985
[ 3]

有限要素法による電界・磁界解析について定式化からプログラム作成までたいへん詳しく書かれています。
「電気工学の有限要素法」とともに名著だと思います。
この本の特徴は非線形解析について説明を多くとっており,解析コードもそれに対応した立派なものが掲載されているという点です。
これからコードを組む人はまずこの本を参考にするとよいのではないでしょうか。初学者は必須の書です。
またこの分野に携わる多くの方が,本書を使って勉強したのではないでしょうか.

「開領域問題のための有限・境界要素法」

加川幸雄:
サイエンス社
1982
[ 4]

電界・磁界・音場解析は無限遠方場に影響が及ぼされてゆく開領域問題であり,有限領域で打ち切らざるを得ない有限要素法にとって大きな問題です。
本書ではそれらの問題を有限要素法で扱う場合に際して,有限領域の外周に無限要素を付加して対処する方法が丁寧に説明されています。
付録には無限要素に関係するコードも掲載されており興味のある人はぜひ一読されたい。まだ絶版ではないようです。

FEMプログラム選1 電界,1994

FEMプログラム選2 磁界・電磁波,1997

FEMプログラム選3 音場・圧電振動場,1998

加川幸雄,山淵龍夫,村井忠邦,土屋隆生:
森北出版
[ 5, 6, 音1]

本シリーズは,それぞれの問題について二次元ないし三次元解析コードを収録しその解説を加えた書です 。
開領域問題対策として無限要素も考慮されています。
コードがとてもしっかりしたものなのでFORTRANの使い方と有限要素法のコードがどんなものなのか理解するのに最適なシリーズだと思います。
要素分割部分や連立一次方程式の解法を交換するだけでもかなりの解析が行なえる優れたコードです。
よく言われるようにコードを開発する時は初心者の場合,いきなりすべて自力で作るよりも既存の優れたコードを自分の問題に対応できるように改良するほうが効率的でよい経験になると思います。ですのでこのシリーズの価値は非常に高いと思います。
今なら森北出版さんのホームページから注文すると3冊で1万5千円程度で買える筈です。

「有限要素法」

シミュレーション技術研究会
培風館
1981年初版
5000円
[ 7]

電界,磁界,音響,導波路問題などへの有限要素法の適用について解説されています.
内容はダイジェスト的なので同じ著者の出版物の焼き直しになっている部分もあります.
20年近く前の本なので,説明されている内容は今でこそ比較的簡単な2次元問題が中心ですが,これから有限要素法をはじめる人にとってはむしろ適しているかもしれません.
書店ではお目にかかれないので,大学の図書館で見つけてください。

「最新三次元有限要素法による電気・電子機器の実用解析」

河瀬順洋,伊藤昭吉:
森北出版
1997
3800円
[ 8]

三次元有限要素法を用いた磁界解析の具体的な適用例が豊富で,解説もくわしいです。
辺要素を用いたA法による解析が中心です。
主に三次元磁界解析の適用方法に関するノウハウが書かれている特徴のある書です.
三次元解析を行なうかたはやはりそばに置いておきたい本ではないでしょうか。

「電気電子機器のCAE」

伊藤昭吉,河瀬順洋:
森北出版
2000
3200円
[ 9]

三次元有限要素法をどのように実際の機器設計に活かしていくかというノウハウが中心の本.
たくさんの具体例を用いてモデル化の方法について説明されています.
「最新三次元有限要素法による電気・電子機器の実用解析」に続く書で内容も近い部分があります.
有限要素法の数理について説明された本はたくさんありますが,実際の工学問題に対してどのように適用していくかを中心に解説されている本は少なくその点でこの本の価値は高いと思います.熱連成問題や着磁解析についても説明されています.

「磁界系有限要素法を用いた最適化」

高橋則雄:
森北出版
2001年5月初版
4600円
[10]

最新の有限要素法による磁界解析手法と最適化について体系的にまとめられた書。
fortranソースコードについても解説があります。
磁場解析に関する最適化を勉強したい人向けです。

「計算電磁気学」

金山寛:
岩波書店
2000年9月初版
4600円
[11]

磁気学というタイトルからして,数式の表現などが理学的な内容となっています。
話題としては,広く満遍なく有限要素法電磁場解析について書かれており,中級者向けになっています。
辺要素やICCG法について言及しています。
解析手法のみならず,解析例もいくつか掲載されており,経験的なことについてもコメントがある点が本書の良いところだと思います。
最近あまり店頭では見かけません。

「数値電磁力学」

本間利久,五十嵐一,川口秀樹:
森北出版
2002年7月初版
4000円
[12]

電磁気学よりの立場で書かれており,数式表現や用語がこの分野の他書とかなり異なり独特です。
工学というよりは,理学系の数学や物理学からのアプローチと思います。
ゲージ条件,辺要素やICCG法の収束について言及しており,上級者ないし研究者向けの書と思います。

日本シミュレーション学会編計算電気・電子工学シリーズ1「電気・電子境界要素法」

加川幸雄,榎園正人,武田毅:
森北出版
2001年2月22日初版
3600円
[13]

本書は,境界要素法による電磁場解析を解説した書です。
境界要素法で電磁場解析にアプローチされている方にとって,今では数少ない参考書です。
個人的な主観ですが,本書は説明が非常にわかりやすいと思います。
文章の書き方や表現,数式や図表の使い方等,視点を変えて学ぶべきことが多い良書だと思います。
なお7章の「電界gradφと導体の接続に関する検討」は渦電流解析を行っている人にとっては大変貴重な資料となるはずです。
そのためだけに買っても良いのではないでしょうか。
境界要素法は,メジャーにはなれませんでしたが,線形場では非常に精度の高い解が得られます。
有限要素法をメインに使っておられる方でも,余力があれば他の手法について知ることは,良い経験になるはずです。

「解析電磁気学と電磁構造」

宮健三:
養賢堂
1995
3605円
[14]

タイトルからわかるように,この本は有限要素法の書というよりは,電磁気学の本です。
一度電磁気学を勉強して,もう一ランク上の理解に達したい人向けです。
紙面の制約でしょうか,全体に占める数式の量が多くなっており,もう少し日本語による直感的な説明があればもっと多くの人が読めると思い少し残念です。

「交直マグネットの設計と応用」

石黒敏郎,坪島茂彦,宮川澄夫:
オーム社
昭和32年3月初版,51年第2版7刷
(当時1300円)
[ ]

本書は,電磁石の設計に関する参考書であり,有限要素法には触れるものではありません。
しかしながら,古典的なマグネットの設計に関して実践的に書かれており,本書のような書を学ぶことで解析を有効に活用することができるようになると思います。
古典的な設計と有限要素法も利用した設計のどこがどのように有利なのかを知る意味で工学の勉強も欠かすことはできません。
「有限要素法による交直電磁石の設計と応用」の中でも参考文献として本書の名前があがっています。
なお,本書は絶版ですので,入手するには古本屋で探すしかありません。大学の図書館にはあるとおもいます。
私は,古本屋で非常に程度の良い版を入手できました。

「永久磁石磁気回路の設計と応用」

山川和郎,大川光吉,宮本毅信:
総合電子出版
昭和54年4月初版
[ ]

「精解演習 電磁気学」

宇田川_久:
廣川書店
平成5年修正版第33刷
3914円
[ ]

「日本AEM学会:電磁力応用シリーズ1 数値電磁界解析法の基礎」

坪内始,内藤督:
養賢堂
1994
3399円
[15]

「日本AEM学会:電磁力応用シリーズ2 実践数値電磁界解析法」

坪内始,内藤督:
養賢堂
1995
3000円
[16]

「新しい計算電磁気学」

五十嵐一,亀有昭久,加川幸雄,西口磯春,A.ボサビ:
培風館
2003年12月
3800円
[18]
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