例題9 無限平板の非定常熱伝導解析(熱伝達問題)
出典:西川兼康,藤田恭伸:「機械工学基礎講座 伝熱学」,理工学社,p.56-58
2次元/非定常/線形/問題 節点数:451 要素数:800 (三角形1次要素) 時間増分値 0.5 [sec]/完全陰解法
境界条件
連続境界条件(断熱境界条件):領域左端( X = 0.00 ),上端( Y = 0.05 ),下端( Y = 0.00 )
熱伝達境界条件:右端( X = 0.05 ) 外部流体温度 100 [℃] 熱伝達率 760.0 [ W / m2℃ ]

物性値:熱伝導率:76.0 [ W / m℃ ] 比熱:462.0 [ J / kg℃ ],密度:7870.0 [ kg / m3 ]

寸法:L1 = 0.10 [m] L2 = 0.05 [mm]
解析モデル ( 1/4モデル )

図 1 に示すような,初期温度が 20 [℃] 一様である Y 方向に無限に長い平板を考えます。
周囲には温度 100 [℃] の流体があり,板と流体との境界では熱伝達が行われるものとします。
1 分後の温度分布を計算し,理論解と比較します。
なおモデルは対称性を利用して,1/4 モデルとします。

図 1 解析モデル

 

 本例題の場合,解析モデルが原点に関して対称であるので,計算モデルは x = 0 および y = 0 の 境界に対称境界条件を設定することで 1/4 モデルに簡略化することができます。
解析モデルと解析条件を図 2 に示します。
本来は熱量のやり取りが連続している部分を省略するので,対称条件は物理量の連続を補償する性格をもちます。
そのため,ここでは連続条件とあえて表現しています。
この条件を解析モデルの右端以外の境界に設定します。
具体的には,熱流速 q = 0 という条件が設定されます。
有限要素法では,この条件はデフォルトで自動的に設定されるため, 実際にはユーザーが特別に設定する必要がない場合がほとんどです。
つまり、この問題では x = 0 ,y = 0,y = 0.05 の境界に熱量のやり取りがプラスマイナス 0 という連続条件と,
x = 0.10 の境界に周囲流体からの熱伝達による(加熱あるいは冷却), 熱伝達境界条件を設定すればよいことがわかります。

 

図 2 解析モデル

計算結果 温度分布

図 2-1 温度分布 自作コード

 

図 2-2 LS-DYNA による計算結果

LS-DYNAに関する解析技術のご相談はこちらへ:ランスモア

温度分布グラフ

本例題は,x 方向にのみ温度分布が変化する 1 次元問題です.本例題の解析解(*)は次の式で与えられます.

■平板内の温度

ここで,
Tfluid [℃] :流体温度
Tinitial [℃] :無限板の初期温度
l [m]:無限板の x 方向の長さ
λ [ W/m℃] :無限板の熱伝導率
ρ [ kg/m3 ]:無限板の密度
c [ J/kg℃ ] :無限板の比熱です。

熱伝達率を α [ W / m2℃ ] とすると,ビオー数 B が次式で定義されます。

ビオー数に応じて Mn が決定されますが,その値は文献に掲載されています。
参考にした文献には n = 5 までの値が掲載されており,級数展開は n = 5として理論解を計算しました。
なお本例題では B = 1.0 であり,文献より Mn = 12.6453 と読み取ることができます。

 

 

図 3 X [m] における温度分布

数値データ
表1-3に数値データを示します。

表1 10[sec]における温度分布の理論解と計算値

表2 30[sec]における温度分布の理論解と計算値

表3 60[sec]における温度分布の理論解と計算値