2 次元磁場解析 No.7 / 有限要素式の導出
2次元磁場・磁界解析の支配方程式は次式で表されました。
(7.1)
続いて支配方程式にガラーキン法を適用した式は次のよう表されました。

(7.2)
弱形式化すると次式を得ます。

(7.3)
両辺にマイナス1をかけて符号を整理すると次式を得ます。

(7.4)
解析に使用する要素を三角形一次要素とし, 要素内の任意点におけるベクトルポテンシャルを次式で示すように線形の内挿関数により近似するとします。
(7.5)
この式を用いて式(7.4)のガラーキン法に弱形式化を施した式を有限要素式の形に離散化します。
静磁場項の離散化 / [S] マトリックスの導出 /
(7.6)
駆動電流密度項の離散化 / {J0} ベクトルの導出 /
(7.7)
渦電流密度項の離散化1 / 磁場変動項 / [E] マトリックスの導出 /
(7.8)
渦電流密度項の離散化2 / gradφ項 / [F] マトリックスの導出 /
(7.9)
この項は,他の項とマトリックスとベクトルのサイズが異なることに注意します。
Sは渦電流を考慮する導体を構成する各節点を共有する要素の面積の和を示します。 詳細はNo.4を参照して下さい。
なお,この方法によるgradφの離散化は現在では一般的ではなく, gradφ自体を未知数とする手法がより一般的です。
渦電流密度項の離散化3 / 速度・運動項 / [M] マトリックスの導出 /
(7.10)
この項は,非対称マトリックスになっていることに注意します。
等価磁化電流密度項の離散化 / {JM} マトリックスの導出 /
(7.11)
磁化方向の磁化を Md とし,x 軸とのなす角を θ とすると, 磁化の x , y 方向成分は次式のように表されます。
(7.12)
式(7.12)を式(7.11)に代入すると等価磁化電流密度項は次式で表されます。
(7.13)
有限要素式
以上で各項の離散化式が明らかになりましたので,有限要素式を組み立てます。
まず,弱形式化された式(7.4)を示します。
(7.4)
式(7.4)に式(7.6),(7.7),(7.8),(7.9),(7.10),(7.13)を代入すると次式を得ます。
(7.14)
式(7.14)をマトリックス−ベクトル形式で表現すると次のようになります。
(7.15)
以上で,2次元磁場解析の有限要素式が導出されました。
この式を解くことで線形問題を解析することができます。
三角形一次要素を使用した場合には,磁場 B [T] は次式で表されます。
(7.16)
x 方向成分と y 方向成分は次のようになります。
(7.17)
上式より,磁場 B は要素内で一定値をとることがわかります。
磁性体の磁気抵抗率 ν [m/H] や磁化 M [T] といった物理量は, B の関数であるため,これらの値も要素内で一定となります。
したがって,一次要素を用いる場合は,B が急激に変化する領域で, 十分細かく要素分割を行なうことが精度を保つ上で望ましいといえます。
なお,ν や M といった磁気特性の非線形性を考慮した解析を行うためには, Newton-Raphson法を視野に入れた離散化が必要となります。
その点については次回説明します。