有限要素法と境界条件 |
ここでは有限要素法でたいへん重要な境界条件について説明します。有限要素法について全く知識のないかたが,いきなり有限要素法の市販ソフトを使ったり,解析コードを先輩から引き継いだりしてプログラムを走らせたりした場合にまず間違いなく問題となるのがこの境界条件です。境界条件がわからないという場合,
1.境界条件とは何かという基本的な所がわからない(初級)
2.扱う問題に応じてどのように境界条件を設定したらよいかわからない(上級)
に分けられると思います.ここでは境界条件が何か少しでも理解が得られるように説明を行ないたいと思います.
有限要素法で扱う方程式は2階の偏微分方程式です。これを解いて未知数を求めるわけですから,スカラー定数のぶんだけ自由度が残るので解を一意に定めるためには未知数の一つが既知数として与えらていなければ解くことができません。これが微分方程式を解くということの重要なポイントです。
次に2階の偏微分方程式を 離散化して次のような有限要素式が得られたとします。ここで,[S]は剛性マトリックス,{u}は求める未知数で変位,{P}は荷重ベクトルです。
有限要素式の各項の呼称は問題ごとに異なりますが,一般に次のように考えてください。[S]は系マトリックス,{u}は未知ポテンシャル,{p}は系を駆動させるような働きをするので駆動ベクトルといいます。この駆動ベクトルを系に対する入力と考えると,その応答を表すのが{u}となります。したがって[S]は伝達関数となり制御系の分野の話との対応がつきます。
私は境界条件の理解が難しい第一の原因は分野ごとに使われる用語が違うことだと思います。つまり応力解析を専門にやっている人のところに熱伝導解析を行いたい人が質問に行っても返ってくる用語が応力解析の世界で使われている用語なので,境界条件について質問する程度の初級者の人には理解が難しくなるのです。その結果まあまずは適当にやってみるかとなり,”あ〜やっぱりうまくいかないや”となって終わります。(笑)