三次元有限要素磁界解析のための定式化 | |
準定常磁界問題の支配方程式は次式で表されます. | |
(1.1)
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ここで次のベクトル公式 | |
(1.2)
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を式(1.1)の左辺第1項の静磁界項に適用した次式について説明します. | |
(1.3)
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上式にはベクトル場において任意のスカラーポテンシャルφの分だけ自由度が残されています.これについて次の等式が成り立つことは明かです. | |
(1.4)
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このことはベクトル場が一意に定まっていないことを示しており,このまま微分方程式を解こうとするとφの数だけ解が得られます.φは任意の数ですから事実上,解は無限に存在することになります. そこで,電磁気学的にはゲージ条件を課してベクトル場を一意に決定するゲージ変換を行ないます.これには次式で表されるクーロンゲージがよく用いられます. |
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(1.5)
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式(1.5)を式(1.3)の右辺第1項に代入するとベクトル場は一意に決定され次式が得られます. | |
(1.6)
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この結果,常にただ一つのベクトル場の解が得られることになります. しかしながら,数値磁界解析においてクーロンゲージなどによる電磁気学的なゲージの固定は意図的に行なわないのが普通です.クーロンゲージを課した場合,方程式の整合性をとるためにペナルティ項を付加し,節点に未知数を割り付けた通常の有限要素法の要素である「節点要素」で離散化して得られる解は, |
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(1.7)
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になることが知られているからです.したがって,一般的には電磁気学的なゲージ変換は行なわずに定式化を行います.これより,微分方程式を解いて得られる磁気ベクトルポテンシャルAは一意ではありませんが,そこから得られる磁束密度Bは常に一意であることがわかっています. 重み関数に要素の補間関数{N}を採用すると,式(1.1)にガラーキン法を適用した式は次式のようになります. |
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(1.8)
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式(1.8)を項ごとに分解すると次のような表現になります. | |
(1.9)
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式(1.9)の左辺第1項の静磁界項は2階微分項なので弱形式化します.まず,次のベクトル公式を考えて下さい. | |
(1.10)
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式(1.10)の右辺第1項にガウスの発散定理 | |
(1.11)
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を適用して変形すると次式のようになります. | |
(1.12)
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式(1.12)を静磁界項に適用すると次式が得られます. | |
(1.13)
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ここで,式(1.13)の右辺第1項は境界積分項で,その成分は次式のようになります. | |
(1.14)
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法線ベクトルとの内積をとります. | |
(1.15)
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ところで,磁界Hとその法線ベクトルnの外積は次式で表されます. | |
(1.16)
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解析領域境界上で磁界が境界に対して垂直になる自然境界条件 | |
(1.17)
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を課せば,式(1.15)と式(1.16)より | |
(1.18)
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となります.したがって,式(1.13)は弱形式化されて結局次式のように変形されます. | |
(1.19)
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次に式(1.9)の左辺第5項の等価磁化電流密度項について考えます.ベクトル公式 | |
(1.20)
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を用いて等価磁化電流項を変形すると次式が得られます. | |
(1.21)
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ここで式(1.21)の右辺第1項は境界積分項であり成分を計算します. | |
(1.22)
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また磁化Mと単位法線ベクトルnとの外積は次のようになります. | |
(1.23)
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磁性体の境界で,磁化Mが境界に対して垂直になるような条件 | |
(1.24)
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を課すと,式(1.23)の各成分は零となることから式(1.22)も零となることがわかります.したがって,式(1.21)の右辺第1項は零となるため,結局等価磁化電流密度項は次式のように表現されることとなります. | |
(1.25)
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今回はこの辺で終わります.勉強したらまた続きを製作します. |